2008年リーマンショックにおけるドルの動きとその影響
2008年のリーマンショックにおけるドルの動きとその影響について、解説します。
ドルの動き
- 初期の急激な円高ドル安
- リーマンショック直後、ドル/円相場は2008年8月の110.48円から同年12月の87.19円まで急激に円高ドル安が進行しました。
- その後の変動
- 2009年4月に一時101.24円まで回復しましたが、その後再び円高が進み、2011年には75円台まで円高が進行しました。
ドルへの信頼低下
- ドル資産からの逃避
- ドルに対する信頼度が急速に失われ、世界中の国々や投資家がドル資産を他の資産へと再投資する動きが見られました。
国際金融市場への影響
- ドル資金不足
- リーマンショック後、世界的に国際金融資本市場が緊張し、ドル資金不足に陥りました。
- 欧州系銀行の影響
- この背景には、金融危機前にユーロ圏、英国、スイス等の欧州系の銀行がドルの国際資金取引を拡大していたことがあります。
中央銀行の対応
- 国際協調
- 各国中央銀行は、国際金融資本市場の安定化のため、国際協調の枠組みの中で、米ドル資金供給などの措置を講じました。
- 固定金利入札
- 日本、ユーロ圏、スイス、英国において、適格担保の範囲内で、固定金利入札、フルアロットメント方式による米ドル資金供給オペを実施しました。
キャリートレードへの影響
- 巻き戻し
- 投資家のリスク回避姿勢が強まり、キャリートレードの巻き戻しが生じました。これにより、円やスイスフランが各国通貨に対して増価しました。
日本経済への影響
- 輸出企業への打撃
- 極端な円高ドル安は、日本の輸出関連企業に大きな影響を及ぼしました。
- 回復の遅れ
- 各国の立ち直りに対して、日本の回復が遅れる一要因となりました。
金融機関への影響
- 格付けの低下
- 日本の金融機関の格付けは、2008年下期になって急速に低下しました。
まとめ
結論として、リーマンショックにおけるドルの動きは、国際金融市場に大きな混乱をもたらし、ドルの信頼性低下、国際的なドル資金不足、キャリートレードの巻き戻しなどの現象を引き起こしました。これらの影響は、特に日本のような輸出依存度の高い国の経済回復を遅らせる要因となりました。また、この危機を通じて、ドルの国際金融システムにおける中心的役割と、それに伴うリスクが改めて認識されることとなりました。