金(GOLD)について

金備蓄とは何か?

金(GOLD)は、世界中の政府や投資家によって価値の保存手段として保有されています。特に中央銀行の金備蓄は、各国の通貨政策や経済安全保障と密接に関係しています。また、個人投資家や企業も、資産の分散やリスクヘッジのために金を保有することが一般的です。

本章では、中央銀行による金の備蓄と、その経済・金融政策への影響、さらに個人・企業レベルでの金の保有方法について詳しく解説していきます。

各国の中央銀行による金保有

各国の中央銀行は、金を外貨準備の一部として保有しています。これは、通貨の安定性を保つための戦略であり、金融市場の信頼を維持するために重要な役割を果たします。

(1) 世界各国の金保有量ランキング

以下は、主要国の金備蓄量(中央銀行の金保有量)のランキング(2024年時点のデータを想定)です。

順位国名金保有量(トン)外貨準備に占める割合(%)
1アメリカ約8,100約70%
2ドイツ約3,300約70%
3イタリア約2,450約65%
4フランス約2,430約65%
5ロシア約2,300約25%
6中国約2,100約5%
7スイス約1,000約50%
8日本約850約4%
9インド約800約6%

アメリカは圧倒的な金保有量を誇り、次いで欧州諸国(ドイツ、イタリア、フランス)が続きます。中国やロシアは近年、急速に金の備蓄を増やしており、ドル依存を減らす戦略を取っています。

IMFやBISの金準備の役割

中央銀行以外にも、国際機関である国際通貨基金(IMF)や国際決済銀行(BIS)も金を保有しています。

IMF(国際通貨基金)
IMFは世界の金融安定化を目的とし、加盟国の経済危機時に金を活用することがあります。
2020年には新興国支援のために一部の金を売却しました。
BIS(国際決済銀行)
「中央銀行の銀行」として機能するBISは、各国の金融システムを支援するために金の取引を行っています。

金備蓄が金融政策に与える影響

金備蓄は、各国の金融政策や通貨戦略にも影響を与えます。

通貨の信用を維持
米ドルは基軸通貨として信頼されていますが、各国はリスク分散のために金を保有し、外貨準備の一部としています。金の保有量が多い国ほど、通貨の信頼性が高まりやすい。
インフレ対策
金は無価値になるリスクが低いため、中央銀行はインフレが進む際のリスクヘッジとして金を購入する傾向があります。
経済制裁への耐性
ロシアは2022年のウクライナ侵攻後、経済制裁を受けましたが、金の備蓄を活用して制裁の影響を軽減しました。このため、近年では中国やインドも金の備蓄を増やす動きを強めています。

個人・企業の金備蓄

中央銀行だけでなく、個人投資家や企業も金を保有することで資産防衛を図っています。

資産分散としての金保有

個人投資家が金を保有する主な理由は、ポートフォリオの分散です。

  1. 株式や不動産に比べてリスク回避資産としての役割を果たす。
  2. 金融危機時やインフレ対策として金が買われる傾向がある。
  3. 株式市場が暴落すると、金価格が上昇することが多い(逆相関の傾向)。

金ETFやデリバティブとの違い

個人や機関投資家は、金の保有方法として現物保有と金融商品(ペーパーゴールド)の2つを選択できます。

保有方法特徴
現物金(地金・金貨)直接保有するため、金融リスクが少ないが、保管コストがかかる。
金ETF金価格に連動する証券で、現物を持たずに投資が可能。
金先物・オプション短期の売買に適しており、レバレッジを利用できる。
  1. 金ETFは手軽に金投資ができるため、個人投資家や機関投資家に人気があります。
  2. しかし、金融危機時にはETFが取引停止になるリスクもあるため、一部の投資家は現物金(地金・金貨)を保有することでリスクを回避しています。

金の現物保有 vs. ペーパーゴールド

フィジカルゴールド(現物保有)
地金や金貨を直接保有する方法。
メリット:金融機関のリスクを回避できる(破綻リスクなし)。
デメリット:盗難リスクや保管コストがかかる。
ペーパーゴールド(ETF・先物・CFDなど)
金の価格に連動する金融商品を取引する方法。
メリット:現物よりも取引が容易で、流動性が高い。
デメリット:市場の混乱時に取引制限がかかるリスクがある。

→ 長期的な資産防衛には、現物保有が有効であり、短期的な投資にはETFや先物取引が適している。

まとめ

  1. 中央銀行は金を外貨準備の一部として保有し、金融政策や経済安定に活用している。
  2. 近年、中国やロシアなどの国が金備蓄を増やしており、ドル依存を減らす動きが加速している。
  3. 個人投資家も、資産の分散やインフレ対策として金を保有するケースが増えている。
  4. 金の保有方法には「現物保有」と「ペーパーゴールド」があり、目的に応じて選択することが重要である。

次章では、「金備蓄と金価格の相関関係」について、過去の事例やデータを基に詳しく解説していきます。