米国株の為替差益と税金|外貨決済・NISA・確定申告【2026年】

執筆・運営:株式会社トリロジー

最終確認日:2026年9月2日 / 情報基準日:2026年9月2日

本記事は、一般的な情報提供を目的として米国株と為替差益の税務上の考え方を整理したものであり、税務相談や投資助言を行うものではありません。個別の課税関係や確定申告の要否は、取引内容、利用する証券会社、他の所得、居住地などによって異なる場合があります。最終的には、国税庁、税務署、税理士および利用する証券会社の最新情報をご確認ください。

米国株を外貨決済で取引していると、「株を売って日本円に戻すまでは、為替差益に税金はかからない」と考えがちです。

しかし、以前から保有していた米ドルを使って米ドル建ての米国株を購入した場合、日本円に戻していなくても、その米ドルに生じていた為替差益が実現したと判断される場合があります。

最高裁判所第三小法廷は2026年6月16日、外国通貨を使って、別の外国通貨または同一通貨建ての有価証券を取得した場合、取引時点で為替差益に係る所得が生じ得るとの判断を示しました。米ドルを使って米ドル建ての米国株を購入する取引も、この考え方の対象になり得ます。[1]

ただし、米国株を米ドルで買えば、必ず税金が発生するという意味ではありません。

米国株の為替差益を正しく整理するためには、投資の流れを次の3つの期間に分けて考える必要があります。

  • 米国株を買う前に米ドルを保有していた期間
  • 米国株を保有していた期間
  • 米国株を売った後に米ドルを保有していた期間

この記事では、2026年6月16日の最高裁判決と国税庁の公表資料を基に、米国株の為替差益がどの段階で問題になるのか、NISAや特定口座を利用している場合はどう考えるのかを解説します。

先に結論|米国株の為替差益はどの場面で問題になるのか

米国株と為替差益の基本的な関係を整理すると、次のようになります。

取引の場面為替差益の基本的な考え方
米ドルを保有しているだけ一般の個人投資家が保有しているだけであれば、通常は含み益の段階であり、為替差益はまだ実現していません。
保有していた米ドルを日本円に交換する米ドルの取得時より円安になっていれば、為替差益が実現する場合があります。
米ドルをユーロなど別の外国通貨に交換する日本円に戻していなくても、交換時点で為替差益を認識する必要があります。
以前から保有していた米ドルで米国株を買う米国株の購入時点で、米ドルの取得時から購入時までの為替差益が実現する場合があります。
円貨決済で米国株を買う米ドルを独立して保有する期間が通常は生じにくいため、株式取引とは別に為替差益を計算する場面は生じにくいと考えられます。
米国株を保有している期間保有期間中の為替変動は、原則として米国株の譲渡損益に含めて計算します。
米国株を売却し、代金を米ドルで受け取る株式売却時点までの為替変動は株式の譲渡損益に含まれ、売却後は新たな米ドル保有期間が始まります。
売却代金の米ドルを後日円転または再投資する株式売却後から円転または再投資までの為替差損益が、別に問題となる場合があります。
NISA口座で米国株を売買するNISA対象商品の売却益などは非課税ですが、購入前や売却後に保有する外貨そのものの為替差益まで、一律に非課税になるとは限りません。
特定口座の源泉徴収ありを利用する米国株の譲渡損益は口座内で計算されても、外貨そのものの為替差損益まで必ず処理されるとは限りません。

最高裁は、外国通貨を別の外国通貨や同一通貨建ての有価証券に交換したとき、その外国通貨の経済的価値が取得した資産の価値に置き換わり、取得時からの値上がり部分が実現した利得になり得ると判断しました。[1]

一方、外国株式の保有期間中に生じた為替差損益について、国税庁は、株式の譲渡損益から分けて雑所得として計算する必要はないと説明しています。[2]

2026年6月16日の最高裁判決で示されたこと

日本円に戻さなくても為替差益が実現する場合がある

最高裁判決の対象となったのは、日本の居住者が外国の金融機関に資産運用を一任し、保有する外国通貨を使って、別の外国通貨や外国通貨建て有価証券を取得していた事案です。

納税者側は、外貨を別の外貨や有価証券に換えた後も為替変動リスクが残っているため、日本円に戻すまでは為替差益が確定していないと主張しました。

これに対して最高裁は、外国通貨を使って別の外国通貨または同一通貨建ての有価証券を取得すると、支払いに使った外国通貨の経済的価値が、取得した資産の経済的価値に置き換わると判断しました。

その結果、支払いに使った外国通貨の取得時の経済的価値を上回る部分は、その取引時点で実現した利得になり得るとされています。[1]

米国株投資に置き換えると、次のような取引です。

1ドル100円のときに購入した米ドルを保有し、1ドル150円になった時点で、その米ドルを使って米ドル建ての米国株を購入する。

この場合、日本円には戻していませんが、投資家は米ドルを手放し、米国株という別の資産を取得しています。

したがって、米ドルを取得したときから米国株を購入するまでに生じた円換算上の値上がりが、為替差益として問題になる可能性があります。

「収入すべき金額」の全額に課税されるわけではない

最高裁判決を理解する際には、「収入すべき金額」と、最終的な「所得の金額」を区別する必要があります。

最高裁は、取得した外国通貨または有価証券の取引時点における円換算額を、所得税法上の「収入すべき金額」としました。

ただし、その円換算額の全額に税金がかかるわけではありません。

取引時点の円換算額から、支払いに使った外国通貨を取得するために要した金額などを差し引いた残額が、その取引に係る所得の金額になります。

単純化すると、次のように表せます。

為替差益に係る所得 = 米国株購入時に支払った米ドルの円換算額 - その米ドルを取得するために要した円換算額

複数回に分けて米ドルを取得している場合や、手数料が発生している場合は、実際の計算が複雑になります。

2026年から新しい税金が始まったわけではない

2026年6月16日の判決は、同日以降の取引だけに新しい税金を課す制度改正ではありません。

国税庁は以前から、外貨建て預金を払い出して外貨建てMMFを購入した場合、外貨建てMMFへの投資時点で、それまでの為替差益を所得として認識する必要があるとの取扱いを公表していました。[3]

また、米ドルをユーロなど別の外国通貨に交換した場合についても、日本円に戻していなくても、交換時点で為替差益を所得として認識する必要があると説明しています。[4]

今回の最高裁判決は、こうした外貨建て取引の考え方について、所得税法上の解釈を示したものと整理できます。

そのため、「2026年6月16日より前の取引であれば関係ない」とは限りません。過去の取引や申告を確認する必要があるかどうかは、取引内容、金額、申告状況などによって異なります。

補足意見では法整備の必要性も指摘された

林道晴裁判官の補足意見には、渡辺惠理子裁判官と石兼公博裁判官が同調しています。

この補足意見では、為替差益に係る所得の実現時期、収入すべき金額、必要経費などについて、明文の規定が十分に整備されていない現状が指摘されています。

さらに、外貨建て投資や国際取引が日常的に行われている状況を踏まえ、外貨建て取引に係る所得税の課税の在り方について、法的な手当てを検討する必要性が示されています。[1]

米国株の為替差益は3つの期間に分けて考える

米国株の税金を整理するときは、米ドルを保有していた期間と、米国株を保有していた期間を分けることが重要です。

1.米国株を買う前の米ドル保有期間

日本円を米ドルに交換した直後は、米ドルという資産を取得した段階です。

その後、米ドルを保有している間に円安が進んでも、一般の個人投資家が米ドルをそのまま保有しているだけであれば、円換算上の値上がりは通常、含み益の段階にあります。

しかし、その米ドルを使って米国株を購入すると、米ドルという資産を手放し、米国株という別の資産を取得します。

2026年6月16日の最高裁判決の考え方によれば、この取引によって米ドルの経済的価値が米国株の価値に置き換わるため、米ドル取得時から米国株購入時までの為替差益が実現する場合があります。

2.米国株を保有している期間

米国株を購入した後は、株価と為替レートの両方によって、円換算した損益が変動します。

米国株を売却するときは、原則として購入価額と売却価額をそれぞれ円に換算し、株式の譲渡損益を計算します。

国税庁は、外国株式の保有期間中に生じた為替差損益について、株式の譲渡所得等から分けて雑所得の対象にする必要はないと説明しています。外国株式の売却代金を円換算した金額が、株式の譲渡収入として扱われるためです。[2]

したがって、米国株を保有している期間中の円安や円高の影響は、原則として米国株の譲渡損益に含まれます。

3.米国株を売った後の米ドル保有期間

米国株を外貨決済で売却すると、売却代金を米ドルで受け取ることがあります。

米国株の売却時点までの為替変動は株式の譲渡損益に含まれますが、売却後も米ドルを保有し続ける場合、その時点から新たな米ドル保有期間が始まります。

その米ドルを後日、日本円に交換したり、別の米国株の購入に使ったりした場合、株式売却時から円転または再投資時までに生じた為替差損益が、別に問題となる可能性があります。

米国株を一度売買するだけでも、税務上は次のような流れに分かれることがあります。

  • 米ドルを保有する
  • 米ドルで米国株を購入する
  • 米国株を保有する
  • 米国株を売却する
  • 売却代金の米ドルを保有する
  • 米ドルを日本円に交換する、または別の資産に再投資する

それぞれの段階で、どの資産を保有していたのかを区別することが重要です。

円貨決済と外貨決済では税金の確認方法が異なる

米国株の決済方法は、一般に「円貨決済」と「外貨決済」に分けられます。

確認項目円貨決済外貨決済
購入に使う資金日本円あらかじめ保有している米ドル
両替証券会社が取引時に行う投資家が事前に米ドルを用意する
購入前の米ドル保有期間通常は独立した保有期間が生じにくい両替後から株式購入まで米ドルを保有する
為替差益の別計算一般に生じにくい必要になる場合がある
為替コスト取引のたびに発生する場合がある両替する時期や回数によって変わる
記録管理比較的整理しやすい米ドルの取得価額管理が必要になる場合がある

楽天証券は、同社の円貨決済について、米国株購入時に日本円から米ドルへの交換と株式購入の精算を行うため、株式売買による損益以外の所得は発生しないと案内しています。

一方、外貨決済については、あらかじめ保有していた米ドルを米国株の購入に使うため、その際に生じた為替差損益が雑所得となり、確定申告が必要になる場合があると説明しています。[5]

ただし、円貨決済の具体的な精算方法、適用される為替レート、外貨預り金の取扱いなどは証券会社によって異なる場合があります。

円貨決済であれば常に有利、外貨決済であれば常に不利ということではありません。為替コスト、取引回数、米ドルの利用目的、記録管理の負担なども含めて判断する必要があります。

NISA口座でも外貨の為替差益が課税対象になる場合がある

金融庁は、NISA口座で投資した金融商品から得られる売却益や配当・分配金が非課税になると説明しています。[6]

ただし、NISAの非課税対象は、原則としてNISA口座で保有する対象商品から得られる利益です。

米国株を購入する前に保有していた米ドルそのものや、米国株を売却した後に保有する米ドルの為替差益まで、すべてNISAの非課税対象になるとは限りません。

次の例で考えてみます。

  1. 1ドル100円のときに1万ドルを取得する
  2. 1ドル150円まで円安が進む
  3. 以前から保有していた1万ドルで、NISA口座の米国株を購入する

米国株を購入した時点における、単純化した為替差益は次のとおりです。

(150円-100円)×1万ドル=50万円

最高裁判決の考え方を前提にすると、この50万円は、米国株を買う前に米ドルを保有していた期間に生じた為替差益です。

その後、NISA口座内で保有する米国株に値上がり益が生じた場合、その売却益はNISAの要件を満たす限り、日本国内で非課税になります。

一方、株式購入前に米ドル自体に生じていた為替差益は、NISA口座で保有する金融商品から得られた利益ではありません。そのため、NISAの非課税とは別に課税関係を確認する必要があると考えられます。

したがって、次の理解には注意が必要です。

NISA口座を使っているため、米国株取引に関係する為替差益はすべて非課税になる。

より正確には、次のように分けて考えます。

  • NISA口座内の米国株の値上がり益:NISAの非課税対象となり得る
  • 米国株購入前に保有していた米ドルの為替差益:NISAとは別に確認が必要
  • 米国株売却後に保有する米ドルの為替差益:NISAとは別に確認が必要
  • 米国株の配当に対する米国側の源泉徴収:日本のNISAとは別の論点

特定口座の源泉徴収ありでもすべて完結するとは限らない

特定口座は、証券会社が、その口座内の上場株式等の譲渡損益を計算する制度です。

源泉徴収ありの特定口座では、米国株の売却による利益についても、証券会社が円換算した譲渡損益を計算し、原則として税金を源泉徴収します。

しかし、特定口座が主に計算するのは、その口座内で管理される上場株式等の譲渡損益です。

米国株を購入する前に保有していた米ドルや、米国株を売却した後に保有している米ドルの為替差損益まで、特定口座の源泉徴収で必ず処理されるとは限りません。

証券会社によっては、米国株の外貨決済に伴う為替差損益を別途確認し、必要に応じて雑所得として確定申告するよう案内しています。[5]

したがって、次の考え方にも注意が必要です。

特定口座の源泉徴収ありを使っているため、米国株に関係する所得はすべて証券会社が処理している。

外貨決済を利用している場合は、特定口座年間取引報告書だけでなく、為替取引報告書、外貨預り金の入出金明細、取引履歴なども確認することが重要です。

米国株購入時の為替差益を計算する例

手数料を考慮しない単純な例で確認します。

取引の前提

時期取引為替レート
2026年1月日本円で1万ドルを取得1ドル140円
2026年8月1万ドルで米国株を購入1ドル150円

米ドルの取得に要した金額は、次のとおりです。

1万ドル×140円=140万円

米国株を購入した時点における、支払った1万ドルの円換算額は次のとおりです。

1万ドル×150円=150万円

単純化した為替差益は次のようになります。

150万円-140万円=10万円

この例では、米国株を購入した年に、10万円の為替差益に係る所得が生じる可能性があります。

その後、米国株を売却した場合

購入した米国株の税務上の取得価額は、原則として米国株購入時の円換算額を基礎に計算します。

その後、株価が変わらないまま、1ドル155円のときに1万ドルで米国株を売却したとします。

項目円換算額
米国株の取得価額1万ドル×150円=150万円
米国株の売却価額1万ドル×155円=155万円
株式の譲渡益5万円

この5万円は、米国株を保有していた期間の為替変動を含む株式の譲渡益です。

同じ5万円を、株式の譲渡益とは別の為替差益として、もう一度計上するわけではありません。外国株式の保有期間中の為替変動は、株式の譲渡損益に含めるという国税庁の整理によります。[2]

ただし、売却によって受け取った1万ドルをそのまま保有し、後日さらに円安になった時点で円転または再投資した場合は、株式売却後の米ドル保有期間について、別の為替差損益を確認する必要があります。

米ドルを複数回取得している場合は計算が複雑になる

実際の米国株取引では、米ドルを一度だけ取得しているとは限りません。

同じ外貨預り金に、次のような米ドルが混在することがあります。

  • 日本円から両替した米ドル
  • 米国株の売却代金として受け取った米ドル
  • 米国株の配当金として受け取った米ドル
  • 米国ETFの分配金として受け取った米ドル
  • 外貨建て債券の利金や償還金
  • 他の金融機関から移した米ドル

それぞれ取得した日と円換算額が異なるため、その後に米ドルの一部を使ったとき、「支払いに使った米ドルの取得価額をどのように計算するか」という問題が生じます。

国税庁は、複数回取得した外国通貨を使って外貨建て資産を購入した事例について、所得税法施行令第118条第1項の規定に準じ、保有する外国通貨の平均的な取得レートを計算する方法を示しています。[7]

たとえば、次のように取得した米ドルがあるとします。

取得した米ドル取得時レート円換算取得額
5,000ドル1ドル130円65万円
5,000ドル1ドル150円75万円

合計1万ドルの円換算取得額は140万円であるため、単純化した平均取得レートは次のとおりです。

140万円÷1万ドル=1ドル140円

この米ドルの一部を米国株購入に使用する場合、平均取得レートを基に為替差損益を計算することが考えられます。

ただし、口座の状況、取引の継続性、事業性、適用する計算方法などによって取扱いが異なる可能性があります。複数回の両替、配当受領、株式売買がある場合は、年間を通じて一貫した方法で計算することが重要です。

為替差益を確認するために保存しておきたい記録

外貨決済を利用する場合は、少なくとも次の記録を保存しておくことが考えられます。

保存する項目確認する内容
取引日米ドルを取得、使用、売却した日
米ドルの数量取得または使用した米ドルの金額
米ドルの取得原因円からの両替、株式売却、配当受領など
米ドルの使用原因米国株購入、円転、他通貨への交換など
取得時の円換算額米ドルを取得した時点の円換算額
使用時の円換算額米ドルを使った時点の円換算額
適用レート証券会社の約定レート、精算レートなど
手数料為替手数料、取引手数料、その他の費用
取引後の外貨残高米ドル残高と円換算した取得価額
証拠書類取引報告書、為替取引報告書、入出金明細など

最高裁判決は、外貨建て取引を行った時点の外国為替相場によって円換算するという所得税法の考え方を前提としています。[1]

年末の為替レートだけを使って1年分を一括計算するのではなく、原則として各取引の時点を基準に確認する必要があります。

どの為替レートを使うかは、取引の種類や証券会社の精算方法などによって異なる場合があります。TTM、TTS、TTB、証券会社の約定レートなどを自己判断で混在させず、適用する方法を確認し、継続して使用することが重要です。

為替差益があると確定申告は必要なのか

一般の個人投資家が外貨そのものの為替差益を得た場合、一般に雑所得として扱われ、確定申告が必要になることがあります。

楽天証券も、外貨決済で米国株を購入した場合、米ドルを消費したものとして外国為替取引と同様に扱い、発生した為替差損益は雑所得になると案内しています。[5]

もっとも、最高裁判決で中心的に争われたのは、外国通貨を別の外国通貨や有価証券に換えたときに、所得が実現するかどうかという点です。

具体的な所得区分や必要経費の範囲は、取引の目的、規模、継続性、事業性などによって判断が異なる可能性があります。

給与所得者の20万円基準

一定の給与所得者については、給与所得および退職所得以外の所得金額の合計額が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告を要しない場合があります。

国税庁は、1か所から給与の支払いを受け、その給与の全部が源泉徴収の対象となっている場合、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超えると、原則として確定申告が必要になると説明しています。[8]

20万円の判定は、為替差益だけで行うものではありません。

対象となる副業所得、その他の雑所得などがある場合は、それらを合計して判断します。

また、「20万円以下なら非課税」という制度ではありません。一定の給与所得者について、所得税の確定申告を要しない場合があるという制度です。

医療費控除や寄附金控除などを受けるために確定申告を行う場合は、申告対象となる他の所得についても併せて記載する必要があります。

さらに、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。住民税の取扱いは、居住する市区町村に確認してください。

為替差損は米国株の利益と相殺できるのか

為替差益が雑所得として扱われる場合、その計算上生じた為替差損を、米国株など上場株式等の譲渡益と自由に損益通算できるわけではありません。

国税庁は、株式等に係る譲渡所得等以外の所得の損失は、株式等に係る譲渡所得等の金額との損益通算はできないと説明しています。[9]

ただし、同じ雑所得の区分内でどの範囲まで内部通算できるかなどは、所得の性質によって判断が異なることがあります。

米国株の為替差益で誤解しやすいポイント

日本円に戻さなければ税金はかからないとは限らない

外貨を日本円に交換しなくても、別の外国通貨や同一通貨建ての有価証券に換えれば、為替差益が実現する場合があります。

課税を考えるうえで重要なのは、「日本円に戻したかどうか」だけではなく、保有していた外国通貨を別の資産に換えたかどうかです。

米国株の購入時と売却時に同じ為替差益が二重課税されるわけではない

米国株を買う前の米ドル保有期間と、米国株を保有している期間は別に計算します。

購入前の為替差益を認識した場合、米国株の取得価額は、株式購入時点の円換算額を基礎に計算します。

株式売却時には、その取得価額と売却時の円換算額との差額を株式の譲渡損益とするため、同じ値上がり部分を二重に計上するものではありません。

特定口座なら外貨の損益もすべて自動計算されるとは限らない

特定口座は、基本的に上場株式等の譲渡損益を計算するための制度です。

外貨預り金そのものの取得価額や、外貨を米国株の購入に使った際の為替差損益まで、特定口座年間取引報告書にすべて反映されるとは限りません。

NISAなら為替差益もすべて非課税とは限らない

NISAの非課税対象は、NISA口座で保有する対象商品の売却益や配当・分配金です。

米国株購入前または売却後に保有する米ドルそのものの為替差益については、NISA口座内の金融商品から得た利益とは別に確認する必要があります。

20万円以下なら何もしなくてよいとは限らない

20万円基準には、給与の支払先、源泉徴収の有無、他の所得、確定申告を行うかどうかなどの条件があります。

所得税の確定申告が不要でも住民税の申告が必要になる場合があるため、「為替差益が20万円以下なら何もしなくてよい」と単純に判断することはできません。

米国株の為替差益に関するよくある質問

米ドルを持っているだけで税金はかかりますか?

一般の個人投資家が米ドルを保有しているだけで、円換算上の含み益が生じている段階では、通常、為替差益はまだ実現していません。

ただし、日本円への交換、別の外国通貨への交換、外貨建て有価証券の購入などによって米ドルを別の資産に換えた場合は、為替差益が実現する可能性があります。

米ドルに両替した直後に米国株を買った場合も課税されますか?

米ドルを取得した時点と米国株を購入した時点が近く、為替レートがほとんど変わっていなければ、為替差益は生じないか、非常に小さくなると考えられます。

ただし、両替時と株式購入時で適用レートが異なる場合や、為替スプレッドなどが影響する場合があります。実際の取引明細と証券会社の計算方法を確認してください。

配当金を米ドルで受け取り、その米ドルで米国株を買った場合はどうなりますか?

配当金を米ドルで受け取った後、一定期間その米ドルを保有し、後日米国株の購入に使った場合、配当受領時から株式購入時までの為替差損益が問題になる可能性があります。

配当の入金日、入金額、入金時の円換算額、使用日、使用時の円換算額を記録しておくことが重要です。

円貨決済にすれば確定申告は不要になりますか?

円貨決済では、あらかじめ米ドルを保有する期間が通常は生じにくいため、外貨預り金の為替差損益を別に計算する場面は抑えやすいと考えられます。

ただし、円貨決済を利用すれば、他の所得や取引を含めて確定申告が一切不要になるという意味ではありません。

特定口座の源泉徴収ありなら為替差益の申告は不要ですか?

特定口座の源泉徴収ありで処理されるのは、原則として、その口座内の上場株式等の譲渡損益などです。

外貨決済で使用した米ドルや、株式売却後に保有する米ドルの為替差益については、特定口座とは別に確認が必要になる場合があります。

NISA口座で米国株を買えば、為替差益も非課税ですか?

NISA口座内で保有する対象商品の売却益は、NISAの要件を満たす限り日本国内で非課税になります。

一方、米国株を購入する前に保有していた米ドルや、米国株売却後に保有する米ドルに生じた為替差益は、NISAとは別に課税関係を確認する必要があります。

2026年6月16日以降の取引だけを確認すればよいですか?

2026年6月16日の最高裁判決は、新しい税制の施行日を定めたものではなく、既存の所得税法について解釈を示したものです。

したがって、同日より前の取引であれば一律に対象外になるとは限りません。過去の取引を確認する必要があるかどうかは、取引内容、金額、申告状況などによって異なります。

まとめ

米国株の為替差益を考えるときは、単に「米ドルを日本円に戻したかどうか」だけで判断することはできません。

2026年6月16日の最高裁判決では、外国通貨を使って、別の外国通貨または同一通貨建ての有価証券を取得した場合、日本円に戻していなくても、取引時点で為替差益に係る所得が生じ得るとの判断が示されました。

米国株投資では、次の3つの期間を分けて考えることが重要です。

  • 米国株を買う前の米ドル保有期間
  • 米国株を保有している期間
  • 米国株を売った後の米ドル保有期間

以前から保有していた米ドルで米国株を購入する場合、購入前の米ドルに生じていた為替差益が問題になる可能性があります。

一方、米国株を保有している期間の為替変動は、原則として株式の譲渡損益に含めて計算します。

さらに、米国株の売却代金を米ドルで受け取り、その米ドルを後日円転または再投資する場合は、株式売却後の為替差損益を別に確認する必要があります。

NISA口座や特定口座を利用していても、外貨そのものの為替差益まで自動的に非課税または申告不要になるとは限りません。

外貨決済を利用する場合は、株式の取引報告書だけでなく、米ドルの取得日、取得額、円換算額、使用日、適用レート、外貨残高を継続的に記録しておくことが重要です。

個別の確定申告の要否や計算方法については、国税庁、税務署、税理士および利用する証券会社の最新情報をご確認ください。

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投資リスクについて:米国株を含む金融商品の取引には、価格変動、為替変動、信用、流動性その他のリスクがあり、元本割れが生じる可能性があります。実際の取引に当たっては、各社の契約締結前交付書面、目論見書、約款その他の説明資料をご確認ください。

参照した主な情報

  1. 最高裁判所第三小法廷「令和5年(行ヒ)第366号 所得税更正処分等取消請求事件・令和8年6月16日判決」
  2. 国税庁「外貨建取引による株式の譲渡による所得」
  3. 国税庁「預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合の為替差損益の取扱い」
  4. 国税庁「保有する外国通貨を他の外国通貨に交換した場合の為替差損益の取扱い」
  5. 楽天証券「米国株式 外国為替取引の確定申告時のお取引確認方法」
  6. 金融庁「NISAを知る」
  7. 国税庁「預け入れていた外貨建預貯金を払い出して貸付用の建物を購入した場合の為替差損益の取扱い」
  8. 国税庁「給与所得者の確定申告」
  9. 国税庁「No.2250 損益通算」

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Posted by Triligy ONE