米ドル誕生の歴史的背景
1792年にアメリカ合衆国で米ドルが発行された歴史的背景には、以下のような要因がありました。
アメリカ独立後の通貨統一の必要性
1783年にアメリカ独立戦争が終結し、アメリカ合衆国が成立すると、13の植民地でばらばらだった貨幣を統一する動きが強まりました。独立以前は、各植民地がそれぞれ異なる通貨を使用しており、これが経済活動の障害となっていたのです。
憲法による通貨発行権の規定
1787年9月17日に作成されたアメリカ合衆国憲法の第1条第8項には、「貨幣を鋳造し、その価値及び外国貨幣の価値を定め、また度量衡の標準を定めること」との記載があり、これが通貨発行の根拠とされました。この規定により、連邦政府が統一的な通貨を発行する権限を持つことが明確になりました。
中央銀行の創設
1791年には、最初の中央銀行として第一合衆国銀行がフィラデルフィアで創設されました[1]。これにより、通貨発行と管理のための制度的基盤が整備されました。
造幣局の設立
1792年にはアメリカ合衆国造幣局が設立されました。これにより、実際に通貨を製造する体制が整いました。
貨幣法の制定
1792年に「貨幣鋳造法(Coinage Act of 1792)」が制定されました。この法律により、新たな通貨単位としてドルが正式に採用され、その価値が規定されました。当初は金銀複本位制が採用され、1ドルの価値は純金の重量で定められました。
スペインドルの影響
当時、北アメリカのイギリス領植民地では、スペイン・ドルが盛んに流通していました[1]。このスペイン・ドルの呼称「ドレラ」が英語読みされて「ドル(dollar)」となり、新しい通貨の名称として採用されました。
経済的独立の象徴
独自の通貨を発行することは、アメリカ合衆国の政治的独立だけでなく、経済的独立の象徴でもありました。これにより、イギリスの通貨システムからの脱却が図られました。
以上のような背景のもと、1792年に米ドルが正式に発行されました。この新しい通貨システムは、アメリカ合衆国の経済的基盤を強化し、その後の経済発展に大きく寄与することとなりました。